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脂質異常症の人は下肢静脈瘤になりやすいのか?

脂質異常症は下肢静脈瘤の危険因子ではない

「脂質異常症の人は下肢静脈瘤になりやすいのでしょうか?」という質問を受けることがありますが、結論から言えば、脂質異常症は下肢静脈瘤を引き起こす直接の引き金にはなりません。下肢静脈瘤は、血液の逆流を防ぐ静脈弁が壊れたり、足の筋肉量が減ったことによるふくらはぎの筋ポンプ作用の低下により、心臓へと戻る静脈血が下肢にたまってしまう病気です。一方、脂質異常症は“静脈”ではなく“動脈”の病気である動脈硬化の危険因子です。脂質異常症では、血液中の脂質が増え、脂質の一種であるコレステロールが、動脈の壁にたまって動脈硬化を引き起こします。しかし、脂質異常症患者には肥満の方が多く見られ、肥満は下肢静脈瘤の危険因子の一つですので、これらの二つの病気が全く関係ないとは言えません。

脂質異常症とはどんな病気?

脂質異常症は、コレステロールや中性脂肪が血液中に必要以上に増加する病気で、過食や運動不足、肥満、喫煙、お酒、ストレスなどが原因だと言われています。コレステロールには、HDLとLDLコレステロールがあり、LDLコレステロールは動脈壁に沈着して、動脈硬化の危険因子にもなるため悪玉コレステロールとも呼ばれています。HDLコレステロールの低下と中性脂肪の増加は、メタボリックシンドロームの診断基準の一つです。下肢静脈瘤の患者の方のなかには、動脈硬化、冠動脈疾患や脂質異常症を発症している方がいますが、これらの病気と下肢静脈瘤の発症年齢が近いためで、直接の関係はありません。一般的に血管病と言えば動脈硬化をイメージする傾向があり、この流れによって「脂質異常症の人は下肢静脈瘤になりやすい」と勘違いされているのだと思います。


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